毎年、スケジュール帳を買い替えると、1ページ目に行きたい山の名前を5つ書いて目標にしている。
その筆頭にいつも記されるのが、日本一の山【富士山】であった。
ところが昨年末に前十字靭帯を断裂するケガをしてしまってから、
今年はこの目標を達成することは出来ないな、と思っていた。
しかし!
今年も行くことが出来ました!嬉しい!
富士山に登ったことのない夫を誘い、日帰りで富士宮コースでアタック。
ランニングが趣味で最近ジムに通って体を作っている夫は、自信満々で「夕食には帰宅できるでしょ」とのたまっていた。
ところが、彼は標高3000メートルを超えた世界の洗礼を受けることになる。
水ケ塚駐車場で仮眠を取り、朝6時発のシャトルバスにて富士宮口五合目に向かい、高度順応のため時間調整。
まあ、ゆっくり登ればいいか、と30分ほどで切り上げて歩き始めたのは朝7時。
これもいけなかったのかなぁ。
朝日が眩しく力強い。
6合目まで体を慣らしながらゆっくり歩いていく。
ウェアの調節をして、ここからが本番。
つづらに続く変わりばえのしない登山道を一足長の歩幅でゆっくりゆっくり歩く。
爽快な天気は見上げるとはるか先までの山小屋を見渡すことが出来た。
自分の体力を過信している夫は、あまりの歩みの遅さにやや不満げ。
しかし、ここは抑えて。
約40分ほどで新七合目到着。
あれ?ペースが早いかな?
とりあえず山小屋脇で腰を下ろして休憩。
私はバクバクと行動食をいただく。
今回の行動食は、菓子パンをメインに据えてみた。
(これに、エナジージェルが3個、種無しぶどう1パック、オレンジ2個)←流石に多かった(笑)
(お昼ご飯は別個におにぎり2個)
ちなみに水は2.5リットルと紅茶のペットボトル1本。
「食べて荷物を減らさないとねー(笑)」なんて言って食べたのだが、夫はお腹が空いてない、と言って休憩時間ももったいない、というような口調。
それでも15分くらい休んで、次の山小屋を目指した。
やや広い場所もあるここからの登山道。
傍らで休む人も増えてきた。
それでも私は、ゆっくりながら止まることなく足元に気をつけながら歩く。
約30分、元祖七合目に到着。
あれ?ずいぶんと早いな?休憩時間を長く取ろうかな。
標高3000メートルを超え、体調に変化はないか夫に尋ねる。
どうやら大丈夫らしい。
行動食フルーツとして持参したぶどうやオレンジの瑞々しさがとても美味しい。
呼吸を深くすることをアドバイスして、次の山小屋へ。
宝永山を見下ろし、ご来光を見終えて下山する人たちとすれ違いながら、素晴らしい景色に後押しされて約50分、八合目に到着。
疲れてペースも落ち、休憩タイムだー、と気持ちを緩めたところ、
休憩するスペースがなく、やっと見つけたところは風向きでトイレの匂いが漂ってくる。
「匂いが気持ち悪いからここでは休めない」
夫は休憩を飛ばして先に進んでしまった。
仕方なくほかの場所を探しながら、結局また50分ほど歩いて九合目まで行ってしまった(笑)
もうヘトヘト。
水をゴクゴク飲み、パンを食べてエナジージェルを食べて、
しっかり休憩。
ここまで来ると山頂も見えてまた元気が復活してくる。
次の山小屋まではそんなに長くない、と思って出発するが、なかなかたどり着かない(笑)
でも約20分ほどで九合五勺に到着。
いよいよ来たなー!
さあ、もう一息!
しかし、この辺りから夫の歩調が曇り始める。
「頭痛と吐き気は?」
「無い」
「深呼吸しながらゆっくりね」
こんな会話を繰り返しながら、ちょうど正午に富士宮口山頂登頂。
奥宮前のベンチに倒れこむように座ると「調子が出ないな」と夫は疲れ切った様子。
慣れなのか、9回目の登頂となった私は全くもって元気で(笑)
とりあえずお参りをして御朱印をいただく。
山頂に近づくにつれペースダウンした夫は、頭痛や吐き気は無いと言っていたが、もう富士山はうんざりだ、と言う表情だった。
私は、午後3時までに下山できるだろう、なんて舐めたことを言っていた夫に“それみたことか”という気持ちになり、
「もう二度と来ないでしょうから、剣ヶ峰まで行っておいたら?」と提案。
夫も気力を振り絞って剣ヶ峰まで登った。
結局高山病だったのだろう、回復しない夫は「早く帰りたい」というので、
おにぎりを食べ終えると速やかに下山を始めた。
登りより下りの方が危険度が増すので、さらにゆっくりと歩いていく。
九合五勺の山小屋で、夫の荷物から重いものを引き取る。
夫は水は飲んでいるようだが、食べ物を受け付け無くなっている。
やはり、食べられるうちに食べておくことも富士登山では重要のようだ。
下山は、本来なら山小屋一つ飛ばしで休憩したかったのだが、とにかく体を休め休めしながら「まだかまだか」と頑張った。
なかなか距離が縮まらない下山道に、気力も萎えていく夫。
今日ばかりは快晴の見通しの良さがアダと感じているようだ。
しかし、いざとなったら山小屋に泊まればいいよ、と焦らないようにゆっくりと下り、
午後5時10分、五合目到着。
5時30分のシャトルバスに乗ることができた。
五合目の、整備されたところを歩くのもやっとな夫。
苦い富士登山となってしまった。
しかし私は、膝のトラブルもなく、至って順調に長丁場の登山を終えることが出来、達成感に包まれいた。
そして、やはり富士山デビューには日帰りはやめた方がいい、と改めて確認したのであった。