9月27日2日目。
北穂岳から下山し、涸沢小屋で昼食を済ませた私は、穏やかなテント場で午後の時間をゴロゴロ過ごすことにした。
その気になれば上高地まで下りることも出来た時間だったが、私は明日楽しみにしていることがあったのだ。
汗をかいたアウターと濡れたカッパを干し、インナーは着たまま乾かす(笑)
生ビールの酔いが程よく回り、テントの中でカメラの写真を見ながらウトウト。
日差しが当たるとテントの中の温度は上がるが、我慢出来ないほどではない。
むしろ、寒い夜のために体に熱を貯めておこう【そんなことはできない(笑))くらいの気持ちでいた。
3時半、テントの受付(2日目分)を済ませつつお手洗いに行き、缶ビールを買う。
そこで、また声をかけられた。
「お疲れ様でしたー🎶」
なんと、隣のテントの女性が私を見つけてくれたのだ。
ヒュッテのデッキでお互いの無事を喜ぶ。
彼女はあの後奥穂まで縦走し、ザイデングラートから戻って来たそうだ。
岩場もすっかり乾いて、不安なところはなく、景色も楽しめたとのこと。
羨ましいけれど、多分今の私は体力がなさすぎたから、鍛え直して出直しだ。
その話を終えてテントに戻り、夕食の支度に入る。
今回持ってきたアルコールバーナーはお湯を沸かすのに時間がかかるのだ。
ごぼうサラダをつまみながらビールを飲んでいると、
「ご一緒していいですかー?」とお隣の女性。
もちろん!と一緒に夕飯を食べた。
日が落ちると一段と寒さが増し、時折さーっと冷たい風も吹いて体が冷えたので、
6時ころお開きにし、それぞれテントで寝んだ。
翌朝。
私が楽しみにしていた時間がやってきた。
明るくなるにつれてテントの外が賑わってきた。
寒さを気合いでやり過ごし、テントの中を片付け、着替えて外に出る。
モルゲンロートだ。
5時42分。
10分ほどの間、その色の変化に見惚れた。
山肌に注目していた人々がそれぞれテントに戻り、私は朝ごはんの支度をしながらテントを撤収する。
よく見るとアウターには霜がつき、ポールは氷のような冷たさだった。
昨日の夕飯の残り半分のアルファ米を雑炊にする。
このためにサコッシュに入れて生卵も持ってきた。
コンソメを1個入れたが味が薄った。
コッヘル半分ほどの量は少し多かったが、冷え込んだ朝に暖かいものが食べられるのはありがたかった。
そして、アルコールバーナーは2泊(約5食)するなら400ml以上の燃料が必要だと分かった。
(300mlを使い切り、予備の固形燃料を使って対応した)
そんなこんなで食事も終え、6時50分テント場を後にする。
隣のテントの女性は、パノラマルートを行くそうだ。
お互いの無事を祈り別れた。
いつもながら、下山は楽だ。足元に注意して、急がないで進む。
疲れない分、高谷橋での休憩は飛ばして横尾を目指す。
9時28分、横尾到着。お手洗いを拝借。
10時30分徳沢到着。
しかし、ゴールはここではない。
新型コロナウイルス感染拡大防止のため、今シーズン上高地では、一箇所を除いて日帰り入浴を取りやめている。
唯一営業しているのが【上高地温泉ホテル】である。
河童橋からやや離れたこちらまで、頑張って歩くのだ。
インフォメーションセンターから梓川沿いを歩くこと約20分。
ウエストン碑の先にホテルはあった。
今シーズンの日帰り入浴の営業は、
12時30分から15時までだった。
オープン早々に到着出来たので待つことなく入ることが出来た。
上高地の源泉掛け流しの温泉で、気持ちよく3日分の汗を流すことができた。
ここからバスターミナルまでも約20分。
私は梓川を渡り、車道を歩いた。
帰りのバスは15時発。20分前くらいに到着して、ゆっくりお手洗いでも済ませようかな、と思ったら…。
「お疲れ様でした!」
隣のテントの女性がまた見つけてくれた(^^)。
パノラマルートはアップダウンがあってキツかったけれど絶景を楽しめたそうだ。
朝食に、と差し上げた菓子パンのお礼に、バスの中でどうぞ、と缶ビールをいただき、
定刻通りバスは上高地を離れたのであった。