登り納めで訪れ、登山途中で右膝を挫き靭帯を断裂したのは4年前。
今ではケガをしたのはどちらの足だったかわからないほど回復し、たくさんの山にも登って来た。
しかし、まだ何か忘れ物をしているような気持ちが拭えないのは、
あのルートをリベンジしてないからだった。
3年前に挑戦した時は、混雑による時間切れで政次郎尾根撤退となり、
未だ表尾根から塔ノ岳の山頂を踏んでいなかった。
今年もたくさんの山々に登ることが出来、ちゃんと登り納めをしたいと考えた時、一番に思い浮かんだのは、やはりこのルートだった。
しかし、ケガをした時のことが蘇り、やはりソロで行くのは控えた方がいいのではないか?
その考えが頭の中から消えず、どうしても踏み切れない。
でも、今年私が挑戦したテント泊白馬岳も、小屋泊鹿島槍ヶ岳も、どちらも単独行で完歩出来た。
なぜ?
それは初めて眼にする景色たちが楽しみだったから。
そうだ、あの表尾根の絶景稜線歩きを楽しめばいいのだ!
そう気持ちが切り替わり、私はリベンジ…ではなく丹沢表尾根の絶景歩きを楽しむために始発で秦野駅に向かった。
7時10分ころのバス停。
私は32人目だった。(数えた(笑))
すぐに20分発のヤビツ峠行きバスが来て乗客を吸い込んでいくが、32人目だと座れなかった(笑)
私の前に並んでいた人たちは、臨時便に乗るようで列から離れた。(おそらくロータリーに“回送”表示のバスが待機していたので、臨時便が出ると予想したのだろう)
迷うところだったが私は立って行くことに。
出発するころ、回送バスは表示をヤビツ峠に変えた。
臨時便はすぐ出たのかなあ。
意外と早く、7時50分頃バスはヤビツ峠に到着した。
すぐにお手洗いを済ませて支度する。
寒さが体を突き刺してくる。
8時15分、ほとんどの人がバス停からいなくなり、私も出発する。
登山口までの舗装路でおにぎりをほおばる。
約30分歩き、表尾根入口へ。
ここから登りの始まりだ。
天気予報では晴れのはずだったが、どうもスカッとしない空。
そのうち雪になりきれなかった氷の粒がパラパラと落ちてきた。
富士山には会えないかもしれないな、と思いながら進む。
すでに2回ウェアの調節をしたが、登りで体が温まり結局上着は着ないで登ることに。
重たい体をなんとか運び、大山が見える高さまで来ると
記憶にある木のトンネルの下には新しい階段。
9時50分ニノ塔到着。
ここで解けた靴紐を直す。
やはり富士山は雲の中。
そこから次のピークはすぐ。
10時10分三ノ塔到着。
ベンチで腰を下ろして休憩。
体が冷えて来る前に出発。
富士山には会えなかったが、これから歩く稜線はハッキリ見えた。
塔ノ岳山頂の尊仏山荘も思いの外近く感じる。
今日はいつもより念を込めてお地蔵様に手を合わせる。
ザレた道を急角度で降りてゆく。
コルはもう崩落続きでこんなに細い。
整備された階段を登り返すと
10時38分烏尾山到着。
このピークもベンチがたくさんあり、富士山を目前に休憩にはもってこいなのだが、
今日は風も吹き抜けるので体が冷えない程度の休憩で先へ。
穏やかな稜線歩き登りの後、だんだん道は険しくなる。
行者ケ岳のピークで私はストックをしまった。
前を歩く親子連れが鎖場に果敢に挑戦している。プレッシャーをかけないように待つ。
そして二つ目の小さな鎖場、私が膝を挫いたところだ。
「ツルツルして歩きにくいよ」
そう、やっぱりここは嫌な岩場よね。
4年前は鎖は1本だったと思うが、私は慎重に後ろ向きに降りた。
なんとか無事にここまで来れ、大きく深呼吸。
しかし油断禁物。
この先もどんな形でケガをするかわからない。
今回は慎重にゆっくりと歩くのだ。
地図にも危険マークが表示されている箇所を慎重にクリアし、崩落箇所を登る。
ホントに、ケガをした足でここを登ったのが信じられない。(おかげでこじらせてしまったが。)
政次郎尾根分岐。
ここまでは3年前も来た。
ここからが久しぶりのルートだ。
油断しないで引き続き慎重に。
見上げる斜面を登り切るとベンチのあるちょっとした広場だった。
私は新大日岳かと思い、ベンチに腰を下ろした。
時計を見ると11時33分。
過去のペースより早い。
アプリを見ると、新大日岳はまだまだ先だった(笑)
そうよね、今日のペースでこの時間のわけないわ。
進む先には結構な斜面が続いている。
登りになると途端にペースが落ち、何人もの人たちに先を譲りながら
11時53分新大日岳到着。
廃屋となっていた山小屋をこの秋撤去したとのことだったが、
屋根とかはこのように残すんだなあ。
屋根が潰れた廃屋は他の山でもよく見るけれどそういうことなのかな。
広場は砂利が敷かれ、ベンチも新しくなっていた。
空いているところに座り、ランチにする。
サーモスに入れて来たお湯は熱々で、沸かし直すつもりで持参したアルコールストーブは出番無し。
しかし3分待っている間に冷めるのね(笑)
固めのカップラーメンで充電完了し、ここから塔ノ岳までもう少し。
北側の斜面には、先日降った雪が残っていた。
途中にある木ノ又小屋はキレイでいつも営業していてホッとする。
いつか味わいたいものだ。
落葉して明るい尾根道を歩くが、雲行きがなんだか怪しい。
歩いて来た道を振り返るとすっかり雲が。
さっきラーメン食べておいてよかった。
小屋の姿が見え、山頂直下のガレだ道を喘ぎながら登ると
12時57分塔ノ岳山頂到着!
心の目で絶景を堪能し(笑)、
休まずにすぐ大倉尾根で下山を開始する。
10キロ以上を歩き、大倉尾根の階段地獄に膝が笑い始める。
実はストック無しの方が私は下りは歩きやすいのだが、
堀山の家から駒止茶屋までの間がじわじわ登り返しがあるのでそこを通過した後ストックをしまった。
長い長い階段歩きをケガをしないよう黙々と耐え、
15時25分登山口に無事下山。
表尾根の呪縛からやっとここで解放された。
何よりケガなく下山出来たのが嬉しい。
さて、バスの時間を確認すると52分かなあ、と歩いてバス停に到着すると、臨時便が待機していた。
走って乗り込むとすぐ出発。
またしても座ることは出来なかったが、予定より早く渋沢駅に到着出来て、今日の山納めは良いことばかりだった、と噛み締めたのであった。