仲間の体調不良により、行き先を変更したのは西丹沢のこちら。
こちらも3年ぶり2度目のお山で、過去の写真を見返してなんとなく思い出しながら登山届けを作成し、明日に控えた山登りの興奮を静かに感じながら久しぶりに晩酌で日本酒などを飲んでいた。(※失敗1)
夜中目がさめると、布団の中。
いかん!
山の支度をしていない!
…ま、いっか。
だいたい見当ついたから、少し早く起きよう、とそのまま眠った。
しかし。
無事に集合時間に間に合ったものの、体調は“絶賛二日酔い”💦
車を出してくれた友達と話をしながらも、なんとなく頭は冴えない。
それでも“歩き始めれば大丈夫だろう”とタカをくくってこの旅は始まった。
朝7時30分過ぎ、コンビニに寄ることなく(※失敗2)西丹沢ビジターセンターに到着。
なんとか1台分の隙間に車を停めることができ、支度にとりかかる。
朝ごはんのつもりで買ったコッペパンも食べる気にならず車に置いておく。(※失敗3)
いかん、靴紐を縛ろうと頭を下げると気持ち悪い(笑)
トイレに駆け込み、座りながら緩めに靴紐を結んだ。
朝8時、ツツジ新道をスタート。
緩やかな山道は新緑に覆われて気持ち良い。しかしペースが上がらず、後続の人たちに何組も抜かされた。
ここで稼いでおかないと、その先急斜面が始まるのに…。
ま、今日は仕方ないか(笑)
約50分でゴーラ沢に到着。
力強い沢の音が心地よい。
この河原でランチするだけでもいいくらいだ。
本格的な山道が始まる。
岩を砕いて作られた階段も、下の方は削られてしまっている。
今でも崩落が続く丹沢の山々。
脆い足元に鎖が取り付けられている。
角度の急な山道をよじ登りながら進む。
そこで私の頭の中に“今日の標高差はいくつだっけ?”と浮かぶ。
登山口は590メートルと書いてあったはず。
山頂は確か1600メートルくらいだ。
ん?
標高差1000メートル??
そんなにあったっけ⁉
ここでまず、自分のリサーチ不足に焦りはじめる。
今日、水も1リットルしか持ってきてないぞ⁉
行動食もタブレットやチョコレートだけしか無いぞ⁉
(※失敗4)
先週登った鷹ノ巣山は、きつい山だとわかっていたので多めに食料や水を用意して臨んだが、ここ檜洞丸もそれと同じくらいの用意が必要な山だったのだ。
涼しいけれど体は大汗をかき、(二日酔いのため)水を欲している。
がぶ飲みしたいのを我慢してこの先の行程を考えながら水を取るようにする。
スタートから約2時間。
すでに喘ぎながらやっとの思いで展望園地に到着。
一緒に登る友人に、富士山を届けられて嬉しい。
塩タブレットを乾いた喉に放り込み、水を飲む。
ここまでも何人もの人に先を譲ったので気持ちばかり焦る。
私だけ富士登山のような深い呼吸を繰り返し、先へ進む。
登山道の名前の由来ともなっているツツジはもうほとんどが咲き終えていた。
シーズンはさぞかし華やかなのだろうな、と花の落ちた新緑を見ながら思う。
喉がヒイヒイ鳴いている。
やっと石棚山からの稜線に出た。
ここから木道を20分ほど進むと山頂だ。
勾配が無くなったのでバイケイソウの中の木道を気力で歩く。
11時30分、山頂到着。
時折雲で日差しが無くなるが、涼しくて気持ち良い広場は、大勢のランチを楽しむ人々で賑やかだ。
山頂直下には青ヶ岳山荘という山小屋があるので、そこで水分の補充をしようと考えたが、道標の指し示す場所は階段をかなり下るようだ。
あれを登り返すのか…。
山小屋に寄るのをやめた。(※失敗5)
さあ、私たちもやっとランチだ。
食べればパワーも出るだろう。
いつものようにカップラーメンの用意をしながら、朝食で飲もうと思っていた紙パックの野菜ジュースを一気飲み。
しかし!
今日に限って私が選んだのは“カレーヌードル”。(※失敗6)
二日酔いの胃袋には重すぎた。
一応作ったけれど箸が進まない。
空腹なんだけど食欲が無い。
二三口食べ、もったいないがあとはビニール袋を何重にも重ねて持ち帰ることに。
そして、私が取れるエネルギーは、缶詰のパイナップルだけとなってしまった。
甘くて水分のある缶詰のパイナップルはその時の自分にはとてもよい補給となった。
12時ちょうど、休憩を終えて下山を開始する。
この山のキモ、犬越路への山頂直下の景色を、ぜひ友達に見て欲しかった。
高度感のある山頂直下の階段を慎重に下り、痩せた尾根を踏み外さないように進んでいく。
あとは下るだけだからなんとかもつだろう…。
と思ったら大間違い。
こんなにアップダウンがあったなんて記憶に無かった💦
要は、進む先にある小山を乗り越え乗り越えして約3.5キロも進むのだ。
下山、と思っていたが、標高1200メートルくらいのところを上り下りする稜線歩きなのである。
道志渓谷神の川方面への分岐を過ぎると、高さ5メートルくらいの鎖場が連続して現れる。
脆く崩れる山々なので、鎖に全体重を預ける事も恐ろしくて出来ない。
あとで地図を確認したら、アップダウンは8箇所ほどあったようだ。
犬越路避難小屋まだかまだか、と呟きながらなんとか足を運ぶが、さすがにここまでパイナップル4切れほどのエネルギーではもたなくなってきた。
【シャリバテ】
この恐ろしさを私は初めて体験する。
山頂をスタートして約2時間。
休憩せずに歩き続けていたところ、ふくらはぎがつりそうな違和感を感じた。
続けて、両腕の肘から先がまるで腕枕をした後のように痺れ始めた。
加えて唇やまぶたが痙攣を始め、苦しい顔の表情が元に戻らなくなってしまった。
これがシャリバテというものだろうか。
今まで、高山病にもシャリバテにも無縁の山ライフを送って来た私に初めて訪れた試練。
しかし、ここで立ち止まるわけにはいかない。
今日の自分のコンディションの悪さと、リサーチ不足をギャーギャー嘆きながら(笑)、朦朧となりそうな意識をなんとか保とうと踏ん張る。
するとやっと道標が現れた。
この大きな崩落斜面は覚えている。
ここまでくれば避難小屋はすぐだ。
待ち焦がれた犬越路避難小屋に到着。
私はたまらず荷物を降ろし、ベンチの上に仰向けに倒れこんだ。
呼吸が整い、顔の痙攣がなんとか収まると、避難小屋でトイレを拝借し、持っていた行動食(と言っても塩分タブレットが5粒と、M& Mチョコレート)を貪り食べる。
しかし、チョコレートは水が飲みたくなってしまうので、あまり食べられなかった。
とにかくしょっぱいものが食べたくて、友達に聞くと、燻製ウズラの卵をくれた。
これでだいぶ回復出来たように思う。
20分ほど休憩し、あとは本当に下るだけ。
残った水もボトルに3センチほど。
コースタイムは70分、これならなんとか行けるだろう、と最後の気力を振り絞り、2時45分、避難小屋を後にする。
枯れた沢のような道をガンガン下る。
すると沢の音が近づいてきた。
澄んだ沢の流れを左手に見ながら順調にゴールに向かって進んでいく。
途中で手と顔を洗ってサッパリ。
美しい沢の流れに癒されながら、最後の一口の水を飲み干し、
3時35分、用木沢出合に到着。
あとはビジターセンターに向かって舗装路をたどるだけ。
しかも、道沿いにはキャンプ場が点在していたはず。
私たちは、砂漠の中のオアシスに辿り着いたかのようにキャンプ場の売店に吸い込まれ、その充実した店内でアイスキャンディにかぶりつき、命を吹き返した(笑)。
最近の登山に対する私の姿勢を試されたかのような今回の登山。
山の神様に厳しく喝を入れられてしまった。
この夏、アタックしたいいくつかの山々への挑戦がひたすら不安になる、しかしシャリバテという貴重な経験の出来た登山となった。
[おまけ]
帰りの東名道は壮大な大渋滞。
港南PAでありついた醤油ラーメンをスープまで飲み干し完食したのは言うまでもない。