昨夜は雨が降ったりやんだり。
風はずっと強かった気がする。
夜8時には就寝したが、夜11時頃トイレに起きた。
蓬ヒュッテのトイレはキレイなバイオトイレ。
使用に1回500円!と貼られている。(テン泊者はそれが幕営料となる。)
便器の蓋をすると撹拌される仕組み。
(間違えて紙を便器の中に入れてしまっても、ちゃんとトングが置かれているので、
撹拌される前に取り上げましょう。)
夜中もガスガスで息が詰まる感じ。でも寒さは無く、酔いに任せて引き続きすぐ眠りの中。
朝3時。
隣の友人のテントは、起きて支度を始めた。
そのほかのテント客も動き始めた。
そんなざわめきを遠くに感じてまどろみながら、
私たちは3時30分に起床。
まずシュラフをしまい、私は外に出てテントの撤収に取り掛かる。
友人はその間に中でパッキング。
まだガスガスで、
テントの水滴を速乾タオルで何度も拭き取る。
風も時折強く吹くが、雨が止んだだけでも感謝しなければ。
ざっと水滴を拭き取り、アウターを形を崩さないように引き上げて畳む。
スムーズだ。
引き続きインナーの水滴を拭う。
私の荷物はとりあえず全てザックに入れ、ザックカバーを敷いてその上に置く。
風が強いので最後までペグを刺したままポールの撤収、そしてインナーを畳む。
スムーズだ。
テントの袋の中にちゃんと収まり、私の荷物のパッキングも速やかに出来た。
少しは慣れてきたかしら。
もう一方の友人チームより早く片付けられたので、
私たちが水を補給しに行くことに。
小屋の前にザックを置いて約10分、土樽方面へ下ると水場がある。
“この水うまし!”
役得ということで寝起きに水をがぶ飲み(^^)
目が覚めた。
熊笹に脅かされながら往復約25分で小屋に戻る。
空が白んじて来た。
小屋に戻ると出発の準備をする登山者で賑わっていた。
まだガスが残っているが空は明るい。
「今日は楽しみですね!」
そんな会話を交わしながら続々と出発していく登山者。
私たちもそれに続いた。
歩くに連れガスが晴れていく。
左手には湯沢の市街までハッキリ。
このために昨日苦しさを耐えてここまできたんだー!
5時20分にヒュッテを出て、6時30分七つ小屋山登頂。
その頃には雲一つない青空!
そして昨日全くわからなかった谷川岳からの縦走路がクッキリ。
あまりの絶景に、ここで朝ごはんを食べることに。
私は潰れたコッペパン(笑)
友人たちはカップラーメンだったのでお湯を分けてもらいスープもいれて温まった。
腹ごしらえも終え、これから歩く山並みを眺めて気を引き締め直し、7時10分出発。
次の目的地は清水峠。
コースタイムは60分。
前方に伸びる登山道を爽快に歩き…と言いたいところだが、
これが見た目よりも傾斜があり、またぬかるみもひどく、
なかなかスピードが上がらないまま、清水峠に着いたのは8時20分になってしまった。
しかしこの絶景!
JRの作業小屋の先にある白崩避難小屋の内部を実査したりして(笑)のんびり休憩してしまった。
(トイレは無かった)
計画よりジワジワと時間が押している。
しかし体は休息を求めている。
なんとか気持ちを奮い立たせ、絵本のような風景に別れを告げ朝日岳に向けての斜面に向かった。
まず目指すのはジャンクションピーク。
途中、尾根道に出るまでかなり深い樹林帯を抜ける。
尾根に出ると紅葉が見頃に。
しかし、台風の影響か、葉っぱか破れてしまっているのが残念だ。
山頂直下になると岩場や崩落した斜面も現れて怖い。
つい先日もこの辺りで滑落事故があったばかり。
慎重に。
清水峠から2時間以上歩いている。
登山道が少し広くなったところで休憩。
食料も、あとは残った行動食を消化していく。
それにしても絶景!
遠く長く感じていた朝日岳も、あと一息。
ジャンクションピークとは、巻機山方面への分岐点のことを指すようで道標があったが、
『←巻機山(難路道なし)』
すっかり藪に覆われて、これは大変そうだ。
私たちは山頂に向けて進む。
朝日岳山頂付近は池塘があり、木道も設置されて歩きやすかった。
草紅葉も美しい。
12時07分、朝日岳登頂。
賑やかだ。
先ほど休んだので、ここでは写真撮影だけして先を急ぐ。
ここからアップダウンの稜線を、笠が岳、白毛門、と縦走していくわけだが、
予定時間を2時間くらいオーバーしている。
昼を過ぎ、東から雲も湧きあがり、昨日歩いた谷川岳一ノ倉方面も稜線は隠れてしまった。
気持ちが焦る。
稜線歩きは気持ちよかったのだが、ここまでの距離と荷物の重さのせいで、キツかった記憶が優ってしまっている。もったいない。
とにかく先へ、と気持ちを奮い立たせ進む。
1時間近く歩き、目の前に傘をひっくり返したような山容の山が。
しかしこれは“ニセ笠が岳”(笑)。
ここを越えるとはるか先に小さく避難小屋を確認。
歩くしかない。
13時35分、笠が岳登頂。
先ほどまでの青空が嘘のように、すっかりガスがかかってしまった。
ここから真正面に一ノ倉が望め、クライミングしている人の姿も見えるほどだと聞いていたが、残念。
ザックを下ろして休憩。
風が時折強く吹く。
最後のピーク白毛門、そして駐車場までは激下りらしい。
でも下りだから気が楽だ、なんてこの縦走路の終盤に向けて気持ちを緩めたが、
ここからが本当に、“終わりの始まり”だった。
14時50分、白毛門。
ここからコースタイムは2時間半。
夕方5時を回ってしまうかー。
「ここから先、鎖場と急登が続きます。」
経験者の友人がボソッと呟く。
岩場も、想像より大きいところが続いて、鎖こそ設置されているものの、普段のようには体を扱えない。
しゃがんだり這いつくばったりして、疲れながらも慎重になり、
時間がさらにかかってしまった。
そして何が大変だったかというと、
部分的に急登が現れるわけではなく、ずーっとこの急斜面が続くのである。
標高が下がると岩場から根っこへと難所の状況が変わった。
標高はまだ1500ほどある。
ため息が出てしまう。
そんな中でも複雑に絡み合った大きな木を見つけ、
手を合わせる。
別に御神木とかではなかったようだが(笑)
さらにまだまだ激下りが続く。
一つ一つ、手足の置き場を探しながらなので、
「また~?また~?」とネガティブな発言が出てしまう。
樹林が深くなったこともあり、ヘッデンを出すことにした。
時刻は17時半を過ぎていた。
疲労度に比べてまだ自分のいる場所がゴールに届かないことを感じ、気が滅入る。
周りはどんどん暗くなる。
とにかく慎重に駐車場向けて、足を止めるわけにはいかない。
やっと右手にロープウェイのターミナルが見えて来た。
足も腰もガクガク。
山を歩いていて、つらくて泣きたくなったのは初めてかもしれない。
暗くなったので写真は撮れなくなった。
沢の音が近づいてきた。
18時25分、なんとか駐車場に到着。
重かったザックを下ろしても体のふらつきが収まらない。
靴紐を緩め、車に残っていた飲み物を飲み干す。
無事に下山できたことより、あの急登地獄から解放されたのが何より嬉しく、
少しも早くお風呂で体をほぐしたい、と駐車場を離れた。
(ロープウェイターミナルで預けた荷物を引き取るのも忘れない。)
湯テルメ谷川で生き返り、帰路に着いたのだが、
帰りの関越道も大渋滞だったので、
高崎で解散して、新幹線で東京へ戻ったのであった。
谷川馬蹄形縦走を終え2週間ほどだったが、まだ膝に違和感を感じている。
自分の能力以上のルートに、鼻をポッキリ折られた山行だった。