お手洗いに起きた夜の11時ころ見上げた空は、
ガスがすっかり晴れた美しい星空だった。
心地よい空気の中、しばらく星空を見上げた。
山で見る星空は本当に美しい。
次に気付いたのは、朝の4時。
すっかり熟睡していたようだ。
暗闇の中、朝ごはんの支度を始める。
それにしても、なんでこんなしっかり朝ごはんを食べてしまったのだろう。
今回の計画の唯一の失敗である。
久しぶりの泊まり山行で勘が鈍ったというか…。
私たちがゆっくり朝ごはんを食べている間に、4時半ころスタートをした登山者がいた。
“あの人たちはどこで朝ごはんを食べるんだろ?”なんて思った私はどこの初心者であろうか(^^;
なんだかんだでスタートしたのが5時50分。
予定を大幅にオーバー。
しかもきっと、今日も足を引っ張るのは私、だと思うと密かに焦る。
テント場横から登山道が続いている。
樹林帯を静かに登っていく。
荷物の軽さにありがたみを感じる。
歩き始めて約50分、
最終水場に到着。意外と早かった。
さっくり給水し、先へ進む。
標高が2000メートルを越えたあたりであろうが、奥丸山の後ろに壮大にそびえ立つ山々が現れた。
笠ヶ岳である。
テント場からは近すぎて見えなかったが、こんな大きな山がすぐそばにあったとは。
そして見上げると太陽を虹がかこんでいた。
もくもくと、しかし傍の植物に目を奪われながら、
スタートして約2時間で千丈乗越分岐に到着。
有名な救急箱が設置されている。
“靴底が剥がれた人は、修復したあと直ちに下山して下さい”
…そういえば、昨日登山道で、パックリソールが剥がれた人がいたけれど、彼はどうしたかしら。
今回、私たちは、左回り、つまり飛騨乗越経由での山頂周遊を計画した。
つまり、この見上げるガレ場をツヅラで登って行くコースだ。
ガレ場に足元をすくわれないよう、
また、落石を起こさないよう、慎重に進む。
呼吸が浅くなったのは、標高が高いせいもあるだろう。
歩いても歩いても、近づく感じがしない稜線(笑)。
前を歩く2人からどんどん離されていく。
焦りながら、自分の体型とトレーニングを怠った性格を恨みながら(笑)、
ひたすら足を動かす。
稜線まであと一息、というところで、
今朝テン場で見送った、朝ごはんを食べずに出発した2人とすれ違った。
「ピーカンで最高でしたよ!空いてましたし。」
おお!
すでに飛騨乗越あたりはガスが行ったり来たりしていて、
笠ヶ岳もすっかり隠れてしまっている。
なぜ私たちはのんびり朝ごはんを食べてしまったんだろう( ;∀;)
悔やんでも仕方ない。
少しでも早く山頂に向かうことを目標に、
9時30分飛騨乗越到着。
ちょこっと飛び出しているのが憧れの穂先である。
コースタイム的にもかなり頑張って巻いて来れたようだ。
さらにひと登りして槍ヶ岳山荘のテント場に到着。
切り立った稜線の上、なんて非現実なテント場なのだろう。
この場所で是非夜を迎えてみたいと思うけれど、
私のスキルでは無理だー💦
さて、お手洗いを拝借しヘルメットを装着、荷物は小屋の前に置かせてもらって、
とうとう穂先へアタック開始。
思った以上に山肌の角度があり、よじ登る感じだった。
ボルタリングの経験は無いが、三点支持を頭から離さず、ゆっくり確実に手と足を動かし、
約30分で
山頂到着ー!!!
タイミングが良かったのか、特に渋滞することもなく、山頂での記念写真も自由に撮ることが出来た。
しかし、360度の絶景は残念ながら見ることは出来ず、真下にある山小屋さえもガスに頻繁に見え隠れしていた。
山頂は見そとから見上げた通り切り立った岩々で、
決してはしゃいたりふざけたりしてはいけない場所だな、と思った。
もちろん、神聖な場所であるから、ということもあるが、
ちょっと目測を誤るとすぐ滑落、なのである。
しかし、かつて遠くから憧れていたあのとんがり山のてっぺんに、ついに自分が立っているのだ、と思うと感慨もひとしおで、
時間が許すならまだまだその場所にいたかったところだが、
次々とハシゴを登り終えた人々の歓声が聞こえる。
私たちは場所をゆずり、穂先を眺めながら小屋でお昼ご飯を食べよう、ということで下山を始めた。
しょうが焼き丼と生ビールで2000円也(°▽°)
食事をしている最中にも、穂先は見えたり隠れたり。
しかし槍沢方面から続々と登山者が到着し、やがて登山道は渋滞が発生していた。
本当にいいタイミングで登れたのかもしれない。
山頂を極めた興奮と、生ビールの心地よいフワフワが静まるころ、私たちは下山を始めた。
帰りは千丈乗越経由。
双六岳方面の山々を眺めながら歩けるといいな、と思っての選択だったが、すっかり雲の中。
おまけに風も強くなり、ただひたすらガレ場の道を、転ばないように落とさないように歩いた。
約50分で千丈乗越到着。
双六岳方面もすっかりガスの中。
地図で見ると、ここから分岐までのすり鉢状の斜面は、かなり急な様子。
慎重に足を進める。
標高が下がって来ると樹木も増え、視界も良好になってきた。
乗越から約30分で分岐に到着。
ここで体制を整えて、テント場まで来た道を戻る。
午後3時40分、テント場到着。
山頂のガスった状況から想像出来ないほど、テント場は明るく清々しかった。
洗濯物も濡れることなく、すっかり乾いていた(°▽°)
山小屋で2泊目の手続きをし、ビールを買って沢で冷やし、
また小屋前のウッドデッキでストレッチをして、
2回目の宴会開始(^^)
しかも今回は、友人が最新兵器を持参してくれ、
本日の槍ヶ岳アタックの様子を収めた動画を見ながら飲む、という至福の時間を過ごすことが出来た。
そして、また明るいうちに就寝。
満ち足りた達成感と程よい疲労感で、またしても熟睡したのであった。