気づいたら2週間が過ぎようとしていた。
これはいかん!
一念発起して向かったお山はこちら。
茨城在住の友人を朝5時に迎えに行き、雨の降る暗闇の中常磐道を北上する。
気になる台風15号はちょうど登山を始める予定の午前9時には通り過ぎ、
信頼をおくお天気サイトではAとなっていたので、
雨の中でも疑うことなく車を走らせる。
目標は福島県の安達太良山。
今までの車登山の中で一番遠いところかもしれない。
一応アクセスについて調べて出かけたつもりが、
最後の最後、郡山ジャンクションで磐越道から東北道へ入りそびれてしまい、
目的地までだいぶ回り道をしてタイムロス。
思えばこれも、この日の登山をを暗示する出来事だったのかもしれない。
予定時刻を1時間ほどオーバーし、
あだたら高原スキー場駐車場に到着したのは午前9時半。
そしてまだやまない雨。
カッパを着込み、支度を雨仕様に準備。
ゴンドラのレストハウスでは、雨足の様子を伺う登山客が数人。
彼らを横目に私たちは、ゴンドラは使わず、ゲレンデ向かって右側から始まる登山道をスタート。
ゲレンデ横のレストハウスに備え付けのポストに登山届を提出し、
幅3メートル程の林道を緩やかにすすむ。
雨が立ち上げる緑の匂いを胸いっぱい吸い込む。
すぐに自然遊歩道との合流地点に。
沢の音が心地よい。
体を慣らしながらミスト状態の森の中を歩く。
すると後ろからエンジン音。
振り返るとオレンジ色の軽四駆が大きく車体を揺らしながら登ってくる。
私たちの横をゆっくり通り過ぎながら優しげに会釈して下さったドライバーは、この先の有名な山小屋“くろがね小屋”のご主人。
頼めば乗せてくれそうな微笑みだった(^^)
今回私が計画したのは、
駐車場から林道を進み、勢至平というところから峰の辻、山頂、そして薬師岳からゲレンデ横を道を駐車場登山口までおりる、というコース。
距離が長いのでくろがね小屋は通らない予定だった。
スタートして1時間、分岐を発見。
しかし、細いケモノ道を数メートル進むも、踏み跡を見失い林道まで戻る。
さらに10分ほど歩くと
さっきよりはっきりとした分岐を発見。
「ここだったのかー!」と
またしても生い茂る細い道を進むも、
今度は足元がぬかるみと水たまりでとても歩きづらそうだったので、
くろがね小屋経由の林道を進むことに。
歩きやすいってありがたいことです。
真っ白なガスの中、沢の音や硫黄の匂いで周囲を感じながら
くろがね小屋到着。
小屋の前で休憩出来るスペースはあったが、視界もないのでそのまま進む。
視界が効かない中、岩に描かれた目印の心強さよ。
一つ一つ確かめながら進んでゆく。
峰の辻到着。
矢印がいろんな方向を指しているけれど、ここでなぜか自分の中で右手に見えているピークを安達太良山山頂だと信じきってしまい、
たどり着いたのは矢筈森。
ぐるっと回っても見つからない“安達太良山”の山頂標。
吹き付ける風と細かい雨に指先がかじかみながら、地図を広げ確認すると、
どうやら反対方向に来てしまったらしい。
コンパスで方向を合わせると、真っ白なガスの中が目指す安達太良山のようだ。
谷底から吹き上がってくる強い風。そして細かい雨粒。
ここから先は写真を撮る余裕もなくなった。
自分の思っている方向と全然違う方向でありながら、地図と目印に導かれて、
なんとか山頂標までたどり着いた。
カッパのせいでむれむれのインナーは、強風をうけてすっかり冷え込んでいる。
時期が時期なら命の危険すら感じたほどだ。
なんとか証拠写真を収め、下山を急ぐ。
指先と耳が冷たくしびれてくる。
岩と石のガレ場を慎重に下りるとやがて植物が強い風から私たちを守ってくれた。
しかし、ぬかるみというか、すっかり水たまりと化した登山道は、まだまだ緊張から開放してくれない。
ゴアテックスに感謝しながらやっとのことで木道に。
先を急ぐあまり、有名な『この上の空が本当の空です』の展望台は行かなかったが、
なんとかゴンドラ駅までたどり着くことができた。
一息つく間もなく、ゴンドラの係員の方に、「強風のためゴンドラが止まるかもしれないので、ご利用の方はお早めにお願いします。」とせかされてゴンドラ乗車。
10分ほど、視界のない急斜面を揺られて降りる。
たちまち曇ってゆく窓ガラス。
ここでやっと自分たちの空腹加減に気づき、下車後レストハウスで遅いランチ。
冷えた体に染み渡るカップラーメン。
濡れっきた衣服を取り替え、有名な温泉には入らずに帰宅の途へ着いたのであった。