何かと慌ただしく気づいたらひと月もお山を離れていた。
久しぶりに歩こうと声をかけたら3人集まり、みんなで梅を見に行こうと決まった。
そして、いろいろ調べていくうち、どうやら湯河原幕山の近くに、ガイドブックに載らない幻の滝があるという。
情報も少ない中、その幻の滝の勇姿に導かれるように、いつの間にか行き先が梅から滝に変わった(笑)。
ヤマレコなどによると、皆さん湯河原梅林から往復する行程で歩かれていたが、
私たちはスタート時間の遅さなどから、
先にバスで遠くまで行き、そこから湯河原梅林に戻って来るコースを選択。
湯河原駅から、バスの便は少なく、
貴重な9時35分発の箱根港行きに乗り込む。
バスは味わいのある温泉街をトコトコ登り、
椿ラインという芦ノ湖までをつなぐ道路をぐんぐん上がって行く。
あっと言う間に湯河原の温泉街がはるか下の方へ。
30分ほど揺られ、
【箱根レーダー局前】という、そこに用事がある業界の人しか(笑)使わないようなバス停で降り、
オートバイがビュンビュン走り抜ける道端で身支度を整え歩き始める。
レーダー局を背にし、バスの進行方向へ数百メートル歩くと右手に山への入口があった。
手元の地形図には別の入口もあり、
本当はもう少し手前から入りたかったのだが、
探すうちにこちらに着いていた。
ここは源頼朝にゆかりのある大杉のあった場所の入口で、
山道も人の手が入っているようだったので、行ってみる。
いきなり下り道。
しかもちゃんと整備され、案ずることはないか…と思ったときにすれ違った登山者が、
「道悪いんで気をつけて…。」とやや荒い息で教えてくれた。
なにせ、今日のルートは、湯河原梅林(幕山)から幻の滝までのルートは歩く人もいるけれど、
そこから椿ライン【箱根レーダー局前】まで出る登山者はほとんどいず、(バスの本数が少ないためと思われる。)
登山口付近こそ整備されていたとはいえ、
実際道が荒れているような情報だったので、
今私たちが歩いている道が正しいのかとうなのか、コンパスと地図を見比べながら道らしいところをどんどん下って行った。
土肥大杉跡という道標が現れ、一応踏んでおく。
さらに道らしいところを進むと、
あたりは倒れた杉の木が道を塞いでいた。
枯れ枝や倒木が入り混じった斜面を、
赤テープ(紫テープ)を探しながら進んで行く。
果たして、この道で合っているのだろうか、と不安になったところで道発見。
(山火事注意のプレートも目印になった。)
登山道のありがたみを噛み締めながら
少し胸をなでおろす。
しかし、この先も腰まである熊笹や、夏だったら見失いそうな木々の生い茂った道が続き、
つづらの道をぐんぐん下って行くと、沢の音か。
大丈夫。地図の通りだ。
右手に沢を望みながら、ハイキングコースを進んで行く。
今までの山の中が嘘のように歩きやすい。
次は沢沿いに登るので、沢の流れに注意しながら進むと、
現れた。
一見荒れたように見える沢だが、よく探すと紫テープが付けられている。
それを目印に、4~5回渡渉し沢をまたぎながら、岩場を登って行くと、
「あったー!!」
いやいや、これは違うのです。
この滝が目印で、さらにこの上が目的地なの。
そう説明するも、
「この滝でも十分キレいじゃない!
ほら、虹も出てる!」
しばし写真撮影ののち、
この滝の左手に下がっているというロープを探すとすぐ見つかった。
ここでハプニング。
まず最初に登り始めた私はロープの状況を確かめるために引っ張ってみた。
すると、なにかに引っかかって握りこぶし3つくらいの大きさの石が落ちて来たのだ。
「危ない危ない!」と後続に知らせ、無事を確認したが、実はのとき左大腿部に落石を受けてしまった。
骨や筋肉へのダメージがなかったので(太くて良かった(笑))そのままもろい壁面に気をつけながらよじ登る。
するとそこには!
想像以上に大きな幻の滝“六方の滝”の姿が!
先日に降った雨のおかげか、水量もそこそこあり、
柱方節理という六方体の岩を黒々と照らして、明らかに変わった形をしていた。
時刻は11時50分。
しばらく写真タイム(笑)
思い思いに写真を撮ったあと、
贅沢に滝の真ん前でお昼ご飯にする。
誰ともなく「上から見てみたいな」という話になり、
このあと幕山へ登るのをやめるなら滝を散策する時間が取れる、と言うと、
満場一致で、“滝散策”(笑)。
一度背負ったザックを降ろし、滝の左手の斜面を大回りに登って行く。
もともと道では無いので急斜面で足場は悪いが、登れないことはない。
思わぬ高度感と、上から見てさらにその形状の面白さがわかり、
自然界の不思議に触れることが出来て面白かった。
そしてさらにここでハプニング。
登るより下りが怖い急斜面をそろりそろりと降りて滝つぼまでたどりついたと思ったそのとき、
またしても私が、足のステップにした岩が崩れ落ちた。
これはさっきのよりも数倍大きく(炊飯器くらい)
2メートルほどの斜面をゴロンゴロンと落ちて行く音は地響きがした。
こちらも幸い誰にも当たらず良かったのだが、
あまり人が通らないところは崩れやすい、ということを身をもって学んだ。
あー、怖かった。
新崎川本流まで降り、そこから幕山への道はよく歩かれて迷うことはなかった。
六方の滝から歩くこと約1時間で、幕山エリアの大石ヶ平に到着。
ここまで来ると、どこから湧いたのか(笑)、ハイカーのグループにたくさん遭遇。
あとはのんびり歩きながら湯河原梅林を目指す。
梅の宴開宴中の喧騒が
無事にたどり着いた安心感へと変わる。
名物の梅ソフトをいただき、余裕をもって湯河原駅にたどり着くことが出来て大満足。
帰りは贅沢にグリーン車で。
日曜日夕方の上りの東海道線は混雑していたので、顔を寄せ合いながら小声で乾杯し、お互いの健闘を讃えあった。